「レクイエム1」 @新型コロナウイルス感染

「坊やよい子だ ねんねしな」
「いまも昔もかわりなく」
「母のめぐみの子守唄」
「遠いむかしの物語」


むかしむかし、あるに村に、人のよいおじいさんとおばあさんがおりました。
ある晴れた日のこと、おじいさんが畑をたがやしていると、急に寒気がして、熱がでてきました。おじいさんはとても具合が悪いので、コタツに入って寝ておりました。
おばあさんは夕ごはんを作りましたが、おじいさんは食べたくないと言って、箸をつけず残してしまいました。
夜になり冷え込んできたので、おばあさんは、おじいさんといっしょに、コタツに入って寝ておりました。
翌朝、おじいさんは、熱がひどくなり息苦しくて、朝ごはんを食べることができないし、水さえ飲むことができませんでした。
おじいさんは、突然、コロナという今まで聞いたこともない恐ろしい病にかかってしまい、あっけなく死んでしまいました。



『新型コロナウイルス』

4月17日、金曜日。雨しとど。
何でよりによって、こんな時に大雨なのだ!
大粒の雨が、車のウインドガラスを激しく叩き付けて来る。ワイパーが左右にせわしなく動き続けて雨を弾き飛ばしているが、激しい雨で前方が良く見えない。
こんな強い雨では、恐らくパトカーはいないだろうから、捕まることはないだろう!
田島昇三は、そう考えて軽自動車のアクセルを強く踏み込み、さらにスピードを上げた。
「事実は小説よりも奇なり」焦る気持ちが、不安感と喪失への恐れを助長する。
悪い予感があったのに何故?何でもっと早く行動しなかったのだ!と悔いる。
朝からお爺さん(伊吹春吉)の携帯電話に何度も連絡したが、留守番電話になっていて出ない。自宅の固定電話に掛けると、お婆さん(伊吹敏江)が出た。
「お爺さんは病院に出かけて行ったが、病院は休診でもうすぐ帰って来る」と言う。
その言葉を信じ、うのみにして数時間も待ってしまったことが悔やまれる。
その後、お爺さんの携帯に何度連絡しても、やはり出ない。何故、お婆さんはお爺さんが、病院へ行ったと言ったのか?私には解らない。
「どうしたの?大丈夫?大丈夫か?」
昨夜、耳が遠いお爺さんに、何度も念を押して聞いた時のことが思い浮かび、その時のいつもと違う辛そうな聲が耳から離れない。
「もうタバコをやめて、火曜日に遊びに行くから」と、言ってすぐに電話が切れてしまった。
お爺さんの苦しそうな声が気になって、すぐに電話を掛け直す。
「あっ、あとでかける……」
辛そうな緊迫した声が聞こえてから、一方的に通話が切れてしまった。それ以後、電話が全然通じない。
「家の中では、ガラケー携帯の電波が悪いから」
いつもならそう言って、すぐ部屋の外に出て話を続けてくれていたのに……。

虫の知らせか?私は妙な胸騒ぎがして1分1秒でも早くお爺さんの自宅に行かなければならないと焦った。アクセルをさらに強く踏み込むと、車はブゥォーと音を立てて、力強く加速した。何回も通い慣れた道路だが、いつもより信号が長く感じられて、もどかしくて苛立つ。
雨脚はさらに激しくなっている。一刻も早く到着したい気持ちから、信号を無視したい!という考えが頭に浮かんで来る。
ようやく市中の渋滞を抜けて、やっとお爺さんの家にたどり着いた。急いで車から降りて、玄関のチャイムを鳴らし、ドアを開けると、廊下の先のリビングルームの中はとても静かだ。
家の中に誰もいないのか?リビングルームの中に入ってよく見ると、リビングの中央にあるコタツにお爺さんとお婆さんが寝転がっていた。
お爺さんが仰向けに転がっている姿を見てあっと驚き、私は、唖然として言葉を失った。お爺さんは、起き上がることもできず寝返りも打てない状態で、呼吸困難でゼーゼーと息をして苦しんでいるではないか! 
高熱で熱いのか?寝間着が肌蹴て、ほとんど素っ裸だった。その信じられない光景に気が動転し、その場に立ち竦んでしまう。
お婆さんが、コタツからゆっくりと起き上がって来て、お爺さんに私が来てくれたことを告げるが、お爺さんは意識朦朧として反応がない。どうしょう……。
すぐに持参した体温計を脇の下に差し込み、携帯用の血圧計を手首にはめて血圧を計ろうとするが、お爺さんが苦しくて身動きするので焦ってしまい上手くいかない。
お爺さんが、一人で水を飲むこともできず苦しんでいるのに、何故?お婆さんが放って置いたのか解らない?憤りの感情に打ちのめされるが、早急に何とかしなければならない。
来る途中で買ってきた冷たいリポビタンDを早く飲ませようとしても、ビンの飲み口が小さくて難しい。仕方がないのでゼリー状の栄養ドリンク「即効元気」を口に含ませる。
お爺さんは、ほとんど水も飲まして貰えず、余程、喉が渇いていたらしくて、酸欠の鯉が水面で口をパクパクさせるように必死で口を動かして飲も
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